第5回

自然言語とプログラミング言語の違い

「あいまいさ」を武器にする人の言葉と、「厳密さ」が命の言語を比べる
到達目標:共通点・相違点を理解し、良い指示(プロンプト)の条件を考えられる

今日の流れ(100分)

1
導入+前回の振り返りクイズ
5分
5
③ミニ講座:気づきとメタ言語能力
12分
2
A ミニ講義:あいまいさ vs 厳密さ
10分
6
④生成AI:曖昧 vs 具体的な指示
20分
3
B ワーク:人向け/AI向けで指示を書く
15分
7
振り返り+次回予告
10分
4
C 全体共有:良い指示ってどんな指示?
15分

A あいまいさ vs 厳密さ

自然言語

  • あいまい・省略が多い
  • 文脈に依存する(=聞き手が意味を補う)
  • あいまいさは"欠陥"ではなく効率的な設計:文脈が働くから、短い形を使い回せる
  • 例:「それ、お願い」で通じる/主語を省いても伝わる

プログラミング言語

  • 曖昧さゼロが前提
  • 文法が1文字違うだけでエラーになる
  • 共有された文脈を仮定できない → だから曖昧さを禁じる
  • 「だいたい伝わる」は存在しない
自然言語は「察してもらう」ことが前提、プログラミング言語は「察してもらえない」ことが前提
参考:自然言語の曖昧さは"効率的な設計"=Piantadosi, Tily & Gibson (2012, Cognition)

B ワーク:人向け vs AI向けで書く

次のお題を①友達に言うとき/②AI(Gemini)へのプロンプトとして書くとき、の2バージョンで書こう
1
今度の飲み会のお店を探してほしい
2
この英文をもっと自然な感じに直してほしい
3
明日の発表の練習に付き合ってほしい
①と②で「何を省略したか/何を追加したか」を見比べよう

C 良い指示ってどんな指示?

いくつかのペアの②(AI向け)を共有し、共通点を出し合おう

良い指示=あいまいさを減らす工夫

  • 誰が(読み手・相手は誰か)
  • 何を(具体的に何をしてほしいか)
  • どんな条件で(制約・こだわり)
  • どのくらいの長さ・形式で
→ これが、次の④「良いプロンプトの条件」に直結する

③ ミニ講座:「気づき」とメタ言語能力

気づき(noticing)

言語習得には、自分の言い方と正しい言い方の「ズレ」に気づくことが欠かせない(noticing hypothesis)

メタ言語能力

自分が使っている言葉を、一歩引いて客観的に見る力

今日のBワークがまさにそれ

「人向け」と「AI向け」で書き分けた作業は、自分の言いたいことを言語化し直す練習=メタ言語能力を鍛える機会になっている。

普段は無意識に自動化されている言語処理を、あえて意識に引き戻す作業でもある。

出典:白井『第二言語習得論入門』p47-48(気づき/noticing=a・anやおばさん例/明示的教育も大事)/意識と無意識=酒井『言語の脳科学』表2-1 p50
④ 生成AIミニ実践(20分)

曖昧な指示 vs 具体的な指示

使うAI:Google Gemini(無料・大学アカウントでOK)

① 曖昧バージョン:「レポート書いて」

② 具体的バージョン:「大学1年生向けに、〇〇について800字程度で、です・ます調でレポートの下書きを書いてください」(〇〇は各自好きなテーマに)

2つの出力を見比べて「具体的にするとどう変わったか」を記録。良いプロンプト=AIに察してもらうのではなく、条件を先に渡すこと(伊藤)。個人情報は入れない。プロンプト2回で完結
🔧 制作の技 4/9「プロンプトの型(本丸)」 ― この「具体的に指示する」が、第11回のアプリの指示文(誰が使う・機能・見た目)にそのまま化ける

振り返り と 次回予告

今日のリアクションペーパー

今日、自分の指示の出し方で
「あいまいだったな」と気づいた点は?
次回 第6回

脳科学とAI:
メタ認知とメタ言語能力

自分の学び方を客観視する方法を、脳科学の視点から掘り下げます。

あいまいさは、人の言葉の武器。

AIに伝えるときは、その武器をいったん置く。

条件を先に渡す。それが良い指示の第一歩。
いま英語は「新しいプログラミング言語」― vibe coding(2025)。だから“良い指示”そのものが、新しいリテラシー。
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